身近なコーヒーフィルターで!高齢者向けにじみ絵アートの始め方と心と指先への嬉しい効果
「何か手軽に始められるアート活動はないかしら?」「親が自宅で一人でも楽しめるものを見つけたいけれど、特別な道具は必要ないものがいいな」。そんな風にお考えの方におすすめしたいのが、身近な材料でできる「コーヒーフィルターを使ったにじみ絵アート」です。
自宅にコーヒーメーカーがあるご家庭なら、きっと戸棚に眠っているであろうコーヒーフィルター。これと、水性ペンや絵の具、少しの水があれば、驚くほど簡単に、そして美しく色の世界を広げるアートが楽しめます。難しい技術は一切不要。色の重なりやにじみの効果は偶然に生まれる美しさがあり、「こうでなければならない」という決まりがないため、リラックスして取り組めるのも魅力です。
コーヒーフィルターアートとは?
コーヒーフィルターは薄くて水を吸いやすい特性があります。この特性を活かして、水性ペンや絵の具で描いた色を水で滲ませ、偶然生まれる色の広がりや重なりを楽しむアートです。乾いた後、形を整えたり、他の素材と組み合わせたりすることで、様々な作品に展開できます。
始めるために必要なもの
とてもシンプルな道具で始められます。
- コーヒーフィルター: 未使用のものが良いでしょう。一般的な白いタイプが色の変化が分かりやすいです。
- 水性ペン または 水彩絵の具: 色鉛筆や油性ペンは水で滲みにくいため、水性タイプを使用します。使い古しのペンでも十分楽しめます。
- 水: コップや器に少量用意します。霧吹きやスポイト、筆などがあると水を垂らすのに便利ですが、指で少量つけても構いません。
- 汚れても良いもの: 机に敷く新聞紙やビニールシートなどがあると安心です。
- ティッシュペーパーや布: 水を吸い取ったり、机を拭いたりするのに使います。
- (必要に応じて)ハサミ、のり、厚紙など: 乾いた後、作品を切り貼りしたり、土台に貼ったりする際に使います。
これらの材料は、100円ショップやスーパー、文具店など、どこでも手軽に手に入れることができます。
コーヒーフィルターアートの具体的な手順
いくつかの方法がありますが、ここでは簡単な手順を一つご紹介します。
- 準備: 机の上に新聞紙などを敷き、コーヒーフィルターを広げます。フィルターは開いて平らな状態にしても、閉じたままでも楽しめます。
- 色を付ける: 水性ペンでフィルターに自由に絵や模様を描きます。点を描いたり、線を引いたり、塗りつぶしたり、好きな色を使って描きましょう。たくさんの色を使うと、にじんだ時に豊かな表現になります。
- 水を垂らす/塗る: 描いた部分に水を少量ずつ垂らしたり、筆や指で塗ったりします。水に触れた部分の色がじわじわと滲んで広がっていきます。水の量によって滲み方が変わるので、試しながら進めてみましょう。
- 乾かす: 色が十分滲んだら、平らな場所に置いて乾かします。完全に乾くまで待ちましょう。天気の良い日なら窓辺に置くと早く乾きます。
- 仕上げ: 乾いたフィルターは、そのまま鑑賞しても良いですし、ハサミで形を切り抜いたり、他の紙に貼り付けたりして作品に仕上げることもできます。例えば、お花の形に切って並べたり、台紙に貼って模様にしたりと、様々なアレンジが可能です。
高齢者にとっての嬉しい効果
このシンプルに見えるコーヒーフィルターアートには、高齢者の方々にとって様々な良い効果が期待できます。
- 認知機能への刺激: どんな色を使おうか、どこに水を垂らそうか、滲んだ色がどう変化するかを考えたり予測したりすることは、脳に適度な刺激を与えます。色の組み合わせを考えることも、創造性を養います。
- 手指の巧緻性向上: ペンを持って描く、フィルターを広げる、水を少量ずつ扱う、ハサミで切る(仕上げる場合)といった細かい指先の動きは、手指の機能維持や向上に役立ちます。
- 精神的な安定とリラックス: 色の美しさや、水によって色が広がっていく様子は、見ているだけでも心が落ち着き、リラックス効果をもたらします。また、にじみの偶然性が面白く、「失敗がない」という安心感から、プレッシャーなく集中して取り組めます。
- 達成感: 自分で選んだ色で、予期せぬ美しい模様が生まれる過程は、発見と驚きに満ちています。完成した作品を見ることは、大きな達成感につながり、「自分にもできる」という自信を育みます。
- コミュニケーションのきっかけ: 完成した作品について話したり、「こんな色になったよ」「次は何色を使ってみようか」と話し合ったりすることは、家族や支援者とのコミュニケーションの素敵なきっかけになります。一緒に作業する時間も、大切なふれあいの機会となるでしょう。
始める際のポイント
高齢の親御さんにアート活動を勧める際、山本さんのような方が知っておくと役立つポイントをご紹介します。
- 声かけは優しく、気軽に: 「これ、面白いものを見つけたんだけど、一緒にやってみない?」「コーヒーフィルターでこんなきれいな模様ができるらしいよ」など、誘うような、あるいは「見つけたもの」を共有するような軽い声かけがおすすめです。「リハビリになるよ」「脳トレになるよ」といった直接的な表現は、かえって抵抗感を生む場合もあります。「楽しそうだからやってみようか」という気軽さが大切です。
- 準備はさりげなく: 始めるにあたって必要なものを、あらかじめ山本さんが準備しておくとスムーズです。「これだけあればすぐにできるみたいだよ」と、始めるハードルを下げてあげましょう。
- 完成度よりプロセスを楽しむ: 上手に描こう、きれいな形にしよう、といった完成度にはこだわらないことが重要です。色が滲んでいく過程や、思いがけない色の変化を楽しむこと自体がアート活動の醍醐味です。「わあ、きれいな色になったね!」「この色の組み合わせ、面白いね」など、プロセスの中での気づきや驚きを共有し、肯定的な声かけをすることで、楽しさが深まります。
- 無理強いはしない: 気分が乗らない時は、無理に勧める必要はありません。材料を置いておくだけでも、後日気が向いた時に始めてくれる可能性もあります。
- 安全への配慮: 水を使うため、床が濡れないように、滑りやすい場所には敷物を敷くなどの配慮が必要です。また、小さな道具を使う場合は、誤飲などに注意してください。
まとめ
コーヒーフィルターを使ったにじみ絵アートは、特別な準備や技術が不要で、自宅にある身近な材料で手軽に始められる高齢者向けアート活動です。
色の美しさや滲みの面白さを通じて、心穏やかな時間を過ごせるだけでなく、指先の運動や認知機能への良い刺激、達成感、コミュニケーションの機会など、高齢者の生活に彩りと活気をもたらす可能性を秘めています。
離れて暮らす親御さんへのプレゼントに材料を贈ってみたり、次に会う時に一緒にトライしてみたりするのはいかがでしょうか。きっと、共通の楽しい時間となり、心温まる作品が生まれることと思います。ぜひ、この手軽なアート活動で、心豊かな時間を見つけてみてください。