偶然の模様が面白い!高齢者向け合わせ絵(デカルコマニー)の始め方と心と指先への良い影響
はじめに
高齢者の方々がご自宅や施設で気軽に楽しめるアート活動として、今回は「合わせ絵(デカルコマニー)」をご紹介します。デカルコマニーは、紙に絵の具を置いて二つ折りにしたり、別の紙に写し取ったりすることで、偶然に生まれるユニークな模様を楽しむ技法です。特別な技術は必要なく、絵の具と紙があればすぐに始められます。
このデカルコマニーは、完成するまでどのような模様になるか分からないという面白さがあり、高齢者の方々の心や指先にも様々な良い影響が期待できます。絵を描くのが苦手だと感じる方でも、偶然の美しい模様に驚きや喜びを感じることができるでしょう。
合わせ絵(デカルコマニー)とは?
デカルコマニー(Décalcomanie)は、元々は版画の技法の一つですが、絵の具を使った簡単なアートとしても親しまれています。紙に絵の具を乗せ、それを転写させることで、シンメトリー(左右対称)な模様や、予測不能な抽象的なパターンが生まれます。
この技法の魅力は、意図しない発見や驚きがあることです。どんな模様になるか想像しながら絵の具を置く工程と、紙を開いた時に現れる模様を見る工程は、まるで魔法を見ているような楽しさがあります。
合わせ絵(デカルコマニー)の始め方
デカルコマニーは、ご家庭にあるものや100円ショップなどで手軽に揃えられる道具で始められます。
必要な道具
- 絵の具: 水彩絵の具やアクリル絵の具。複数の色があるとより楽しめます。
- 画用紙: 厚みのある紙がおすすめです。折って使う場合は、あらかじめ半分に折っておくとスムーズです。
- 筆: 絵の具を置くために使います。スプーンや割り箸、指でも代用できます。
- パレット: 絵の具を出す容器。お皿や牛乳パックを切ったものでも代用できます。
- 水: 絵の具を溶いたり、筆を洗ったりするのに使います。
- 新聞紙やビニールシート: 机などが汚れないように敷きます。
- 濡れ雑巾やティッシュ: 手や道具を拭くのに使います。
簡単な手順(基本編:紙を折る方法)
- 準備: 作業する場所に新聞紙などを敷き、絵の具、水、筆、半分に折った画用紙を用意します。
- 絵の具を置く: 半分に折った画用紙の片側(折り目の左右どちらか一方)に、好きな色の絵の具を筆や指を使って置きます。点々と置いたり、線を引いたり、塊で置いたりと自由に配置します。絵の具は少し多めに置く方が、転写されやすくなります。
- 紙を閉じる: 絵の具を置いた面を内側にして、紙を半分に閉じます。
- 軽くこする: 紙の上から、絵の具が全体に広がるように指や手のひらで優しくこすります。強くこすりすぎると絵の具が出すぎてしまうこともあるので、様子を見ながら調整します。
- 開く: ゆっくりと紙を開きます。すると、反対側に絵の具が転写されて、偶然の模様が現れます。
- 乾燥: 作品を広げたまま、絵の具が完全に乾くまで待ちます。
アレンジ編:別の紙に写す方法
紙を折るのではなく、絵の具を置いた紙の上に、別の紙を重ねて軽くこすり、剥がす方法もあります。この方法だと、折り目のない自由な形や複数枚の作品を同時に作りやすいという利点があります。
合わせ絵(デカルコマニー)で期待される効果
デカルコマニーは、単に絵を描く楽しさだけでなく、高齢者の方々にとって様々な良い影響をもたらす可能性があります。
認知機能への良い影響の可能性
- 色の選択: 好きな色を選ぶ、色の組み合わせを考えることは、脳への刺激となります。
- 予測と発見: 絵の具を置く時に「こうなるかな?」と想像し、紙を開いた時に「わあ、こうなった!」と発見する過程は、思考力や探求心を刺激します。
- 集中力: 絵の具を置いたり、紙をこすったりする作業に集中することで、注意力を養うことにつながる可能性があります。
心や精神面への良い影響
- 達成感と喜び: 偶然生まれた予想外の美しい模様や面白い形は、作品が完成したという達成感や、驚き、喜びをもたらします。絵を描くのが苦手でも素敵な作品ができるため、「自分にもできた」という自信につながることもあります。
- リラクゼーション: 絵の具の色を見たり、紙の手触りを感じたりする作業は、心を落ち着かせ、リラックス効果をもたらす可能性があります。
- 自己表現: どのような色を選び、どこに絵の具を置くかという選択を通して、その時の気持ちや感覚を自由に表現できます。
指先の運動と感覚刺激
- 手指の巧緻性: 筆を持つ、絵の具を絞り出す、紙を折る・こするなど、指先や手を使った細かな動きは、手指の機能維持や向上に役立ちます。
- 感覚刺激: 絵の具の滑らかな感触や、紙の手触りなど、様々な感覚を刺激します。
高齢のご家族にアート活動を勧める際のポイント
離れて暮らす親御さんや、身近な高齢者の方にデカルコマニーのようなアート活動を勧める際には、いくつかのポイントがあります。
- 楽しさを伝える: 「これ、絵の具を置いて紙をパタンとすると、面白い模様ができるんだよ。一緒にやってみない?」のように、活動そのものの面白さや意外性を伝えることから始めてみましょう。
- 強制しない: 「やった方がいいよ」と押し付けるのではなく、あくまで「こんな楽しいことがあるみたいだよ」と提案する姿勢が大切です。興味を持ってもらえなければ、無理強いはしないようにしましょう。
- 準備を手伝う: 道具の準備や片付けは、高齢者の方にとっては負担になる場合があります。活動を始める前に必要なものを揃えたり、終わった後の片付けを手伝ったりすることで、スムーズに始めることができます。
- 一緒に楽しむ: もし可能であれば、一緒にデカルコマニーをやってみましょう。一緒に色を選んだり、できた模様を見て驚いたり笑ったりすることは、大切なコミュニケーションの時間になります。
- 完璧を求めない: 上手にできることよりも、絵の具の色に触れたり、偶然の模様を楽しんだりする過程そのものを大切にしましょう。「こうしなきゃいけない」というルールはなく、自由に楽しむことが一番です。
- 作品を飾る: できた作品は、ぜひ見える場所に飾ってみましょう。ご本人の達成感につながりますし、ご家族が来たときの話題にもなります。
まとめ
合わせ絵(デカルコマニー)は、絵の具と紙さえあれば自宅で簡単に始められる、高齢者の方におすすめのアート活動です。予測不能な面白い模様が生まれる過程は、指先を使いながら脳を刺激し、完成した時の驚きや喜びは、心に活力を与えてくれます。
絵を描くのが苦手という方でも気軽に楽しめますので、ぜひ一度、デカルコマニーの世界に触れてみてはいかがでしょうか。ご家族と一緒に取り組むことで、コミュニケーションのきっかけにもなるでしょう。手軽に始められるデカルコマニーで、日々の生活に彩りを加えてみてください。