簡単で楽しい!高齢者向けフロッタージュ(こすり出し)の始め方と心身への良い影響
手軽に始める高齢者アート:フロッタージュ(こすり出し)の魅力
ご自宅や施設で、どなたでも気軽に楽しめるアート活動をお探しでしょうか。高齢者の方々にとって、アート活動は日々の生活に彩りを与え、心身の健康維持にもつながる可能性を秘めています。今回は、特別な道具や技術が一切いらない、とてもシンプルなアート技法「フロッタージュ(こすり出し)」をご紹介します。
フロッタージュは、フランス語で「こする」という意味を持つ技法です。紙の下に凹凸のあるものを置き、上から鉛筆やクレヨンでこすることで、そのものの形や質感を紙に写し取ります。身近にある様々なものがアートの素材となり得るこの活動は、高齢者の方々にとって、発見と創造の喜びをもたらすきっかけとなるでしょう。
フロッタージュ(こすり出し)を始めるための準備
フロッタージュの最大の魅力は、その手軽さにあります。準備するものは、どのご家庭にもあるようなものばかりです。
準備するもの
- 紙: コピー用紙、画用紙、広告の裏など、どんな紙でも構いません。少し薄手の紙の方が模様が出やすい場合もあります。
- 筆記具: 色鉛筆、クレヨン、パステルなど。様々な色があるとより楽しめます。
- こすり出すもの: これがアートの素材となります。
- 自然のもの: 葉っぱ、木の皮、石、貝殻など。
- 人工のもの: 硬貨、布の質感、網、レース、でこぼこした壁、木目など。
これらの素材は、ご自宅の中や、お散歩の途中で見つけることができます。硬貨であればお財布の中に、葉っぱであれば近所の公園に、布であればお洋服やカーテンにと、探すことからアートは始まります。
フロッタージュ(こすり出し)の簡単な手順
準備ができたら、さっそく始めてみましょう。手順は非常にシンプルです。
- 素材を置く: こすり出したいものを机の上などに置きます。
- 紙をかぶせる: その上から紙をそっとかぶせます。素材がずれないように、片方の手で軽く紙を押さえておくと良いでしょう。
- 上からこする: 色鉛筆やクレヨンを寝かせるように持ち、紙の上から素材のある部分を優しくこすります。
- 模様を楽しむ: 紙の上に素材の凹凸が浮かび上がってくる様子を観察します。
- 様々な素材と色を試す: 一枚の紙に複数の素材を置いてこすったり、色を変えて重ねたりすることで、様々な表現が生まれます。
特別な技術は必要ありません。力の入れ具合で濃淡が変わったり、色を重ねることで深みが出たりと、試行錯誤する過程も楽しみの一つです。
フロッタージュに期待される心身への良い影響
フロッタージュは単に楽しいだけでなく、高齢者の方々の心身に様々な良い影響をもたらす可能性があります。
- 認知機能への刺激:
- 「どんな模様が出るかな?」と想像したり、浮かび上がった模様を見て「これは何の形かな?」と考えたりすることは、脳への良い刺激となります。
- 色を選ぶ、素材の形を認識するなど、五感と脳を連携させて使う活動です。
- 集中して作業に取り組む時間は、脳の活性化につながることが期待されます。
- 手指の巧緻性(こうちせい)向上:
- 色鉛筆やクレヨンを持つ、紙を押さえる、力を加減してこするなど、指先や手を使った細かい作業は、手の機能維持や向上に役立ちます。
- 精神的な安定とリラックス:
- 好きな色を選び、集中して一つのことに取り組む時間は、心を落ち着かせ、穏やかな気持ちをもたらす可能性があります。
- 素材の質感や、色が紙の上に現れる様を楽しむことは、感覚を刺激し、リフレッシュにつながるでしょう。
- 達成感:
- 短時間で作品が完成するため、「できた!」という達成感を感じやすい活動です。この成功体験は、自信につながり、次の活動への意欲を高めます。
- コミュニケーションの促進:
- 「この葉っぱ、きれいな形だね」「これは何円玉?」「どんな模様が出た?」など、素材探しや作品について話すことは、ご家族や施設の職員の方々とのコミュニケーションのきっかけになります。
- 一緒に散歩に出て素材を探すことも、良い交流の時間となるでしょう。
高齢の親にフロッタージュを勧める際のポイント
離れて暮らす親御さんや、身近な高齢者の方にフロッタージュを勧める際には、いくつか心を留めておきたい点があります。
- まずは見本を見せる: 「こんなことができるんだよ」と、ご自身が楽しそうにやって見せると、興味を持ってもらいやすいでしょう。
- 無理強いしない: 「やらなきゃダメ」ではなく、「こんな面白いものがあるみたいだよ、一緒にやってみない?」と、あくまで提案する形が良いです。
- 身近で簡単なものから始める: 最初は、硬貨や食卓のランチョンマットなど、すぐに手に入る分かりやすい素材から始めてみましょう。
- 成功体験をサポート: きれいに模様が出たら「わあ、すごいね!」「本物みたい!」などと肯定的な声かけをすることで、楽しさや達成感を感じやすくなります。
- 自由に楽しんでもらう: 完璧を目指す必要はありません。色の選び方やこすり方は自由。その方のペースで、自由に楽しんでいただくことを一番に考えましょう。
- 一緒に素材を探す: お散歩の目的地を「面白い葉っぱ探し」にしてみるなど、活動をきっかけに外に出る機会を作るのも良い方法です。
まとめ
フロッタージュ(こすり出し)は、特別な準備や技術が不要で、身近にあるもので気軽に始められるアート活動です。葉っぱの葉脈や硬貨の模様、布の質感など、普段は気に留めないものの美しさや面白さを発見する喜びは、日々の生活に新鮮な刺激を与えてくれます。
このシンプルな活動が、高齢者の方々の認知機能の維持、手指の運動、そして心の安定につながる可能性を秘めていることを考えると、試してみる価値は大きいのではないでしょうか。ご家族や周囲の方々が、温かい声かけやサポートをしながら一緒に楽しむことで、活動はさらに豊かな時間となるはずです。
ぜひ、身近な素材を見つけて、フロッタージュの世界に触れてみてください。