散歩がアートに!身近な葉っぱや小枝を使った高齢者向けアートの始め方と心身への良い影響
散歩がアートに!身近な葉っぱや小枝を使った高齢者向けアートの始め方と心身への良い影響
ご自宅や施設で過ごされる高齢者の方にとって、手軽に楽しめるアート活動は、日々の生活に彩りや生きがいをもたらす大切な時間となり得ます。特別な準備や技術が不要で、身近なもので始められるアートは、多くの方にとって挑戦しやすいのではないでしょうか。
今回は、いつもの散歩で拾える葉っぱや小枝といった自然の素材を使ったアート活動をご紹介します。自然に触れる心地よさと、手を動かす楽しさを組み合わせたこの活動は、心と体に様々な良い影響が期待できます。
自然素材アートの魅力
自然素材を使ったアートは、季節の変化を肌で感じながら材料を集められるという、特別な魅力があります。公園や庭先、いつもの散歩道で出会った葉っぱや小枝、木の実などを「宝物」として持ち帰り、それを作品として形にするプロセスは、高齢者の方にとって新鮮な発見や喜びにつながるはずです。
また、自然素材はそれぞれが unique(ユニーク)な形や色、手触りを持っています。同じものは二つとない素材を組み合わせることで、世界に一つだけのアート作品が生まれます。
準備するもの
自然素材アートを始めるために必要なものは、非常にシンプルです。
- 自然素材: 葉っぱ、小枝、木の実、種、枯れた花びらなど。散歩中に拾い集めるのがおすすめです。
- 台紙: 厚紙や画用紙など、作品を貼り付けるための丈夫な紙。ダンボールの切れ端なども活用できます。
- 接着剤: 木工用ボンドや液体のり。葉っぱなど平たいものには液体のりが、小枝など立体的なものには木工用ボンドが使いやすいでしょう。
- ハサミ: 必要に応じて葉っぱや小枝をカットするために使います。
- ピンセット(あると便利): 小さな素材を扱う際や、細かい部分を調整する際に役立ちます。
- 新聞紙やビニールシート: 机が汚れないように敷くために使用します。
材料集めの際の注意点:
- 公園などでは、拾っても良い場所か確認しましょう。
- 濡れているものや、虫がついている可能性のあるものは避けましょう。
- 持ち帰った材料は、新聞紙の上に広げてしばらく乾燥させると、カビの発生を防ぎやすくなります。
活動の始め方・手順
自然素材を使ったアートに決まったやり方はありません。自由に、感じるままに楽しむのが一番です。ここでは簡単な手順の例をご紹介します。
- 材料を観察する: 拾ってきた葉っぱや小枝の形、色、手触りをじっくり観察してみましょう。「この葉っぱは何に見えるかな?」「この小枝はどんな形に使えそうかな?」と考えるだけでも脳の良い刺激になります。
- テーマを決める(任意): 何かテーマを決めてみるのも楽しいかもしれません。例えば「動物」「顔」「お家」など、簡単なもので構いません。テーマがなくても、自由に並べてみるだけでも十分楽しめます。
- 台紙に配置してみる: 接着剤で固定する前に、台紙の上に材料を置いて、どのように配置するか考えてみましょう。材料を動かしたり、組み合わせたりすることで、イメージが膨らみます。
- 貼り付ける: 配置が決まったら、接着剤を使って台紙にしっかりと貼り付けます。葉っぱの裏側にのりを塗ったり、小枝の固定したい部分にボンドをつけたりします。
- 描き加える(任意): 貼り付けた素材に、ペンで顔や模様、背景などを描き加えても良いでしょう。動物の目にボタンをつけたり、毛糸を貼り付けて髪の毛にしたりと、他の素材を組み合わせるのもおすすめです。
- 完成: 接着剤が乾いたら作品の完成です。
自然素材アートで期待される良い影響
この活動は、単に手を動かすだけでなく、高齢者の方の心と体に様々な良い影響をもたらす可能性が考えられます。
- 脳の活性化:
- 材料集めの際に、様々な形や色の自然素材を見分け、選ぶという行為は、観察力や判断力を養うことにつながります。
- 作品の構成を考えたり、どの素材をどこに配置するか考えたりすることは、思考力や創造性を刺激します。
- 手順を追いながら作業を進めることは、段取り力や集中力の維持に役立つ可能性があります。
- 手指の巧緻性(こうちせい)の維持・向上:
- 小さな葉っぱや小枝を拾う、持ったり置いたりする、ハサミで切る、接着剤をつけるといった細かい手の動きは、手指の筋肉や関節を使い、巧緻性の維持や向上を促します。
- ピンセットを使う作業は、より繊細な指先のコントロールを養う訓練にもなります。
- 精神的な安定とリラックス:
- 自然素材に触れることは、心を落ち着かせ、リラックス効果が期待できます。
- 作品を完成させることで得られる達成感は、自信につながり、前向きな気持ちを育みます。
- 季節の移り変わりを作品にすることで、日々の変化を感じ、生活にリズムや楽しみが生まれます。
- コミュニケーションの促進:
- 家族や支援者と一緒に材料集めに出かけることは、外出の機会を増やし、会話のきっかけになります。
- 完成した作品について話したり、見せ合ったりすることで、自然とコミュニケーションが生まれます。
- 「これは鳥に見えるね」「この葉っぱ、きれいな色だね」など、共通の話題で会話が弾むでしょう。
高齢の親に勧める際のポイント
離れて暮らす親御さんにこの活動を勧める際は、いくつかのポイントを押さえておくとスムーズかもしれません。
- 無理強いしない: まずは楽しそうに話を聞いてもらうことから始めましょう。「こんな面白いアートがあるんだよ」と写真を見せたり、実際に作ってみたものを見せたりするのも良い方法です。
- 一緒に始める提案: 最初は「一緒に散歩に行って、きれいな葉っぱを探そうよ」と材料集めから誘ってみたり、「一緒に一つ作ってみない?」と一緒に作業してみたりするのがおすすめです。
- 楽しさを伝える: 認知症の予防やリハビリといった効果を前面に出すよりも、「これ、面白そうだよ」「きれいな葉っぱがいっぱい見つかるかも」「どんなのができるか楽しみだね」など、活動そのものの楽しさを伝えるようにしましょう。
- 完璧を求めない声かけ: 作品の出来栄えに良い悪いはありません。自由に作れたこと、楽しめたこと、手を動かしたことを褒める声かけを心がけましょう。「素敵な色の葉っぱが見つかったね」「これはどうやって貼ったの?すごいね」など、プロセスや工夫に注目すると良いでしょう。
- 安全への配慮: ハサミを使う際は見守る、小さな木の実などを口に入れないよう注意するといった、安全面への配慮も大切です。
まとめ
身近な葉っぱや小枝を使ったアートは、高齢者の方が自宅や施設で手軽に始められる、心身に優しい活動です。散歩という日常の行為に目的が生まれ、集めた素材を作品にするプロセスは、創造性を刺激し、手指の運動になり、そして何より、自然の美しさや季節の移り変わりを感じる豊かな時間となります。
この活動を通じて、日々の暮らしに彩りを加え、ご家族や周りの方との温かいコミュニケーションが生まれるきっかけとなれば幸いです。難しく考えず、まずは拾った葉っぱを並べてみることから始めてみませんか。