指先で描く優しい色!高齢者向けパステルアートの始め方と心への効果
ご自宅で手軽に始められるパステルアートとは?
高齢になってから新しい趣味を見つけることは、日々の生活に彩りを与え、心身の健康維持にも繋がる素晴らしい機会です。中でもアート活動は、特別な技術がなくても始めやすく、表現する喜びを通じて豊かな時間を過ごすことができます。
今回は、パステルという画材を使った「パステルアート」をご紹介します。パステルアートは、パステルを粉状にして、指やコットンを使って紙に色を乗せていく技法です。絵を描くのが苦手と感じている方でも、塗り絵をするような感覚で気軽に始めることができます。
なぜ高齢者の方にパステルアートがおすすめなのでしょうか?
パステルアートが高齢者の皆様や、そのご家族・支援者の皆様におすすめできる理由はいくつかあります。
まず、必要な道具が比較的少なく、手軽に始められる点です。専門的な設備は必要なく、ご自宅のテーブルなどで十分に行えます。また、絵の具のように水を使う必要がないため、準備や片付けも簡単です。
次に、指やコットンを使って色を伸ばすという、シンプルで繰り返し行う動作は、心地よいリズムを生み出し、リラックス効果が期待できます。色の柔らかな質感や、指で直接紙に触れる感覚も、穏やかな気持ちをもたらしてくれるでしょう。
さらに、パステルアートは「こう描かなければならない」という決まりごとが少ないため、自由な発想で楽しむことができます。これは、自己肯定感や達成感に繋がりやすく、日々の活動への意欲を高めるきっかけにもなり得ます。
パステルアートを始めるために準備するもの
パステルアートを始めるために必要なものは、どれも比較的手に入れやすいものばかりです。
- パステル: ソフトパステルやオイルパステルなど種類がありますが、初めての方には扱いやすいソフトパステルがおすすめです。少量セットから販売されています。画材店だけでなく、大きめの文具店やインターネット通販でも購入できます。
- 紙: 画用紙やケント紙など、少し厚みのある紙が適しています。はがきサイズから始めると、短い時間で完成させやすく、達成感を得やすいかもしれません。
- カッターナイフ: パステルを削るために使用します。安全のため、パステル削り器があればより安心です。
- コットン、綿棒、ティッシュペーパー: 削ったパステルの粉を紙に伸ばしたり、細かい部分を塗ったりするために使います。指サックを使うと指が汚れにくくなります。
- 練り消しゴム: 色を消したり、ハイライトを入れたりするのに使います。普通の消しゴムでも代用できますが、練り消しゴムの方が紙を傷めにくいです。
- フィキサチーフ(定着液): 作品が完成した後に吹きかけると、パステルの粉が落ちにくくなります。ヘアスプレーでも代用可能ですが、換気を十分に行ってください。
始め方:パステルアートの簡単な手順
基本的なパステルアートの始め方をご紹介します。
- 描きたい絵のテーマや色合いを決めます。(例: 青空、夕焼け、簡単な花など)
- カッターナイフやパステル削り器を使って、必要な色のパステルを少量削り、粉状にします。小さな容器やお皿に出しておくと扱いやすいです。
- 指やコットン、ティッシュペーパーなどを使い、削ったパステルの粉を紙に優しく乗せたり、広げたりして色を付けていきます。最初は広い範囲から塗り始めると良いでしょう。
- 色の境目をぼかしたり、重ね塗りしたりして、グラデーションを作ったり深みを出したりします。
- 細かい部分や線を描きたい場合は、パステルの角を使ったり、綿棒にパステルを付けて塗ったりします。
- 練り消しゴムを使って、雲の形を作ったり、光を表したりと、変化を加えてみましょう。
- 作品が完成したら、フィキサチーフを吹きかけて粉を定着させます。換気の良い場所で行ってください。
難しく考えず、自由に色を組み合わせて楽しむことが一番大切です。季節のモチーフ(春なら桜、夏ならひまわりなど)や、思い出の風景などをテーマにするのも良いでしょう。
パステルアートに期待される心身への効果
パステルアートに取り組むことは、高齢者の方の心身に様々な良い影響をもたらす可能性があります。
- 認知機能の維持・向上:
- どのような絵を描くか考えたり、色の組み合わせを選んだりすることは、思考力や判断力を使います。
- 指やコットンを使って丁寧に色を乗せる作業は、集中力を養います。
- 色の名前を思い出したり、配色を考えたりすることは、記憶力や言語機能への刺激にもなり得ます。
- 精神的な安定とリラックス:
- 優しいパステルの色合いや、指で色を伸ばす繰り返しの動作には、心を落ち着かせる効果があると言われています。
- 作品を作り上げる過程で、達成感や自己肯定感を得ることができ、心の健康に繋がります。
- 集中して取り組む時間は、日々の不安や心配事から一時的に離れる機会となり、気分転換になります。
- 手指の運動能力の維持:
- パステルを削る、指やコットンで色を乗せる、練り消しゴムを使うといった細やかな作業は、手指の筋肉を使い、巧緻性(器用さ)の維持に役立ちます。
- コミュニケーションの促進:
- 完成した作品について話したり、一緒に制作したりすることは、ご家族や介護者との大切なコミュニケーションのきっかけになります。
- 作品を通じて、その方の感情や考えを知る手がかりにもなり得ます。
これらの効果は個人差があり、全ての方に同じように現れるわけではありませんが、アート活動が心身に良い刺激を与える可能性は広く認められています。
高齢のご家族にパステルアートを勧めるには
離れて暮らす親御さんや、身近な高齢者の方にパステルアートを勧める際は、いくつかのポイントがあります。
- まずは楽しさを伝える: 「これやってみようよ」と一方的に勧めるのではなく、「こんな色の絵、綺麗だね」「指で描けるらしいよ、面白そうだね」など、まずはパステルアートの持つ優しい雰囲気や楽しさを伝えることから始めましょう。
- 無理強いはしない: 興味を示さない場合は、無理に勧めず、また機会を改めましょう。楽しそうに取り組む姿を見せるなど、きっかけ作りから始めても良いかもしれません。
- 簡単に始められる準備をする: 最初から全てを任せるのではなく、パステルを削っておいたり、紙と道具をセットしておいたりするなど、すぐに始められるように準備をしてあげると、取り掛かりやすくなります。
- 一緒に楽しむ: もし可能であれば、一緒にパステルアートを体験してみましょう。「これどうやるのかな?」「こんな色にしてみたよ」などと声をかけながら、一緒に色を塗る時間は、コミュニケーションを深める貴重な機会となります。
- 結果より過程を大切に: 上手に描けたかどうかよりも、パステルに触れて色を塗る過程そのものを楽しむことを応援しましょう。完成した作品は、たとえシンプルなものでも、積極的に褒めることで、次への意欲に繋がります。
まとめ:パステルアートで心豊かな時間を
パステルアートは、特別な技術や力が必要なく、指先で気軽に色と触れ合える優しいアートです。ご自宅で簡単に始められる活動として、高齢者の皆様の心豊かな時間を作る一助となることでしょう。
認知機能の維持、精神的な安定、手指の運動、そして大切な人とのコミュニケーションのきっかけとしても、パステルアートは様々な可能性を秘めています。まずは小さなサイズからはがきサイズの紙で、お好きな色を自由に塗ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。
穏やかで温かいパステルの色に触れる時間が、日々の暮らしに優しい光を灯してくれることを願っています。